ストーリー
イカくんとカエルくんは樹脂でクラゲを作る仕事をしている。
2020年新型コロナウイルスの年、クラゲ水槽を貸し出した店舗は次々に休業しクラゲが工房に戻ってきた。
二人は壊れたクラゲをガラスに貼りつけてクラゲの墓を作るのだった。
彼らの工房〈浮遊ファクトリー〉は千数百年前の古墳群の中にあり、平城宮跡に面している。
現代のピラミッドはどこにあるのかと思いを巡らせ古墳や野原の散歩をする毎日。
宇宙好きのイカくんの考えでは、現代のピラミッドは、CERN、カミオカンデといった宇宙の始まりや終りを解明するための巨大な測定器なのだ。
コロナで仕事の減った二人は、宇宙の始まりと終わりをテーマに展覧会をする。
〈宇宙の直径を聴く装置 あるいは 私たちの最初の鼓動のための聴診器〉といった作品を制作してギャラリーで展示した。
その宇宙展も終わり、契約の切れたクラゲ水槽撤収作業に行った帰りに寄ったカフェで、イカくんは脳溢血を起こして急死してしまう。
自分が死んだことに気がつかないイカくんは、カエルくんがトイレに入ったのを最後に姿を消した夢を見ていた。
夢の中でイカくんは<宇宙の直径を聴く装置>を装着し、カエルくんを探す旅に出る。
<カエルくん>
あまり表に出てくることはないが、浮遊ファクトリーの大黒柱である。 工房の経理・総務・システム構築・デザイン・運転・運搬となんでもやる。 特技はカエル漫画とトイレ争奪戦。 イカくんがトイレに行く気配を感じ取ると、先に素早くトイレを奪って立て篭もる。
<イカくん>
浮遊ファクトリーの代表。 脳内で宇宙の言葉であるイカ語が響きだすと人の話が耳に入らなくなってしまう。 特技は寝ながら考えること。考えながら歩くこと。トイレに行こうとすると、いつもカエルくんに先を越されてしまう。